結婚式の撮影で私がもらったもの
名古屋の結婚式場で私はいつものように写真を撮っていました。
披露宴も終わりに近づいた時、新郎の友人が会場キャプテンのもとに向い何かを伝えているようでした。キャプテンは困った様子で申し訳なさげに頭を下げていました。しかしその友人はキャプテンの両肘を掴むと倒れこむほど深く頭を下げていました、その様子は誰も気がつく事はなくキャプテンは笑顔を見せるとバックヤードへと足を進めました。
程無くして司会者から「ここで突然ではありますがご友人の○○様より歌のプレゼントがあります」とコメントがあった事で先ほどの友人とキャプテンのやり取りが繋がった。
曲が始まり友人は新郎に手招きをし呼び寄せ歌い始める。しかしその友人は他の列席者にも声を掛けはじめる一人、また一人、お父さんにも、お婆ちゃんにも、みんなが歌詞は分らなくても会場中が両手を広げ一つになる、しかし物足りないかのように友人は声をかける司会者にも、プランナーにも、フォトグラファーにも、そしてキャプテンの元で共に歌い始める。
会場中が一つとなりリズムと共に広げた手が右に左にと揺れていた、私のカメラは友人と共に涙を見せる新郎新婦の姿を映し、不器用に手を振る父と母と会場の溢れるほどの手を映した。
曲が終わり鳴りやまない拍手に新郎新婦の涙も止まらなかった。心が温かくなると同時に私一人が参加できなかった孤独感は素敵な出来事を写真に残したい気持ちと友人の気持ちにこたえたい私的な気持ちで複雑なものでした。
後日、新郎新婦から手紙が届きました。中を見ると私が撮った写真が入っていました、その写真は会場で両手を広げ歌うみんなの姿を残した写真でした、ただ一点私が撮った写真と違っていたのは私の写真を切り抜きその写真に張り込んでくださった世界に一枚だけの写真でした。
私は写真の仕事をしていて本当に良かったと思っています。
そしてこの感動は次のシャッターの為にあり、幸せを繋げていく事が私たちの使命なのだと信じています。